笠松将×BlackEyePatch|強い自己表現から生まれる、自由なアティチュード


「BlackEyePatch」の服は、ただのファッションではなく、都市での生き方や自己表現を映し出すキャンバスだ。役者として国内外で多様な表現に挑む俳優・笠松将は、その服が持つHIPHOPの精神と同じように、自らのアティチュードを研ぎ澄ませ、変化を恐れず生きる力を体現する。彼の地元である名古屋を舞台に、BlackEyePatchを纏い、ファッションシューティングを。注目を集める韓国映画『Good News』の撮影秘話も伺った。
- Photo
- Takahiro Mizushima
- Stylist
- Masahiro Hiramatsu
- Hair&Make
- Masa Kameda
- Text
- Hisako Yamazaki
- Edit
- Mariko Araki、Kaori Tanno(RIDE)
HIPHOPカルチャーを纏う、
唯一無二の東京ブランド
HIPHOPカルチャーをバックボーンに持つ、東京発のストリートブランド「BlackEyePatch」は、単なる洋服ではなく、都市の空気やカルチャーを身に纏う体験そのものだ。目を引くのは、彼らが描く独自のグラフィック。アジアの街角やアメリカのチャイナタウンの風景からインスピレーションを得た“世界におけるアジア”のモチーフ、そして「取扱注意」などの日本語のロゴが落とし込まれたデザインは、シンプルなTシャツやフーディでさえ、見る者の記憶に強く刻まれる。このブランドの魅力を語るうえで欠かせないのが、デザイナーの顔も名前も公表しないという、その匿名性だ。さらに、PUMAやマンチェスター・シティFCとのコラボレーションを行うなど、ストリートウェアの枠を超えてアートやスポーツ、カルチャー全体に影響を与えている。
「“取扱注意”のパーカーはめちゃくちゃ流行っているから、『やっと出会えたね!』という感じで。僕の周りの音楽をやっている仲間たちがみんな着ているんです。実際に着てみると、やっぱり強いし、すごく目を引くから、人気がある理由がわかりました」と笠松将さん。



笠松将が語る、
HIPHOPの魅力と生きる力
今年4月に名古屋PARCO西館1Fにオープンした「BlackEyePatch NAGOYA」は、東京・原宿、大阪・心斎橋に続く国内3店舗目であり、東海エリア初の直営店となる。ストリートブランドらしいラフな空気感を漂わせ、シンプルな白壁とコンクリート調の床を基調に、ディスプレイされるアイテムがオブジェクトのように見える、まるでストリートのショーケースのような空間だ。誕生以来、HIPHOPカルチャーを核にしたものづくりを続け、ラップやグラフィティのエッセンスをファッションへと落とし込み、そのアティチュードは生き方を投影するスタイルを生み出す。
笠松将さんもまた、かねてより「HIPHOPが好き」を公言してきたひとり。「HIPHOPっていう概念自体、すごく難しいんですよね。何がHIPHOPなんだって突き詰めていくと、答えはひとつじゃない。でも僕にとっては、他者に向けてどうこう言うというより、自分自身を鼓舞してくれるもの。聴いているとすごくパワーが出るし、そういうところがすごく好きです」
彼が惹かれるのは、単なる音楽としての刺激にとどまらない。アーティストたちの人生そのものを、詩として、記録として追体験できることに深い魅力を感じている。「HIPHOPのアーティストって、たとえば15歳の頃から曲を書いている人が、30年後には45歳になっていて。アルバムごとに価値観や考え方が変わっていくし、彼らの行動も社会状況も変わっていく。30年間のひとりの詩人の人生をずっと追いかけて聴けるなんて、こんな贅沢なアートはほかにないと思うんです。もちろん、ワンフレーズがTikTokなどで切り取られて何万回も再生される……というのもいいけれど、僕は彼らがどういう曲を作って、どう変わっていったのかという“変化のドキュメント”に心惹かれるんです」
そんな彼が特に心を打たれたのが、NORIKIYOの『俺達の唄 (feat. MACCHO)』(2019年)。「『生まれたこと自体に意味なんてない けどもしも欲しいんならば付けちゃいな』っていうフレーズがあるのですが、これはすごく好きですね」







数々の海外経験を経て、
気づけば変わっていた心の景色
日米合作ドラマ「TOKYO VICE」(2022年)をはじめ、ブッカー賞受賞作を原作とするPrime Videoオーストラリア・オリジナルシリーズ「奥のほそ道 – ある日本軍捕虜の記憶–」(2025年)、韓国のNetflix映画『Good News』(2025年10月17日公開)など、日本国内だけでなく海外でもその表現力を試みてきた笠松さん。ここ数年は海外での生活が多いという。
「海外にいると、何も思い通りにいかないんですよね(笑)。食べものも時間も違うし、太陽は夜の9時ぐらいまで出ている。そんな場所にいると、“当たり前”なんてないんだなって気づくんです。準備していても、セリフすら変わってしまう。意味わかんないなって思う瞬間も多くて。そうやって考えた結果、今は『自分が何をいちばんしたいのか』がわからなくなってきたんです。すごく有名になりたいとか、面白い芝居をしたいとか、お金が欲しいとか……いろいろ考えても、どれもそんなに『いらないかも』って。20代の頃は、有名になって、認められて、評価されたいということにも憧れましたが、今はもう、何にも憧れないですね。欲しかったものはある程度手に入ったし、満たされているし、上を見ればきりがない。昔は自分がやり遂げたいことがあったから、現場でもピリピリしていた時期もあった。でも今は、どんな現場でもとても穏やかな感じです」





韓国映画『Good News』の撮影で、
山田孝之さんの言葉に号泣した韓国の夜
10月17日からNetflixで配信される韓国映画 『Good News』 では、初めて韓国での作品作りに挑戦した。「俳優仲間を監督に紹介し、受かった仲間たちと一緒にこの作品に参加しました。ソル・ギョングさん、ホン・ギョンさんをはじめとする韓国のスーパースターも多数出演していて、日本からは山田孝之さんも」。韓国撮影のいちばんの思い出は、山田さんから受けたアドバイスだという。「俳優仲間を山田さんに紹介したいなと思い、打ち上げ中に彼を囲んで話しをしていたんです。俳優仲間の1人が質問すると、山田さんが真顔で、『まず、年齢を決めなさい』『タイムリミットを決めて、それを超えたら辞めなさい。それまで死ぬ気でやるんだ』と。その言葉の重さと、向き合ってくれた優しさ。誰かがいつか辞めるって報告してきたら…その夜はみんなで泣きましたね」
映画『Good News』は、1970年に日本の共産主義団体によってハイジャックされた旅客機を無事着陸させるため、謎のフィクサーやエリート空軍中尉ソ・ゴミョンらが集結し、真実と嘘が入り混じる絶体絶命の秘密作戦に挑む物語。「韓国での初挑戦は、新しい発見の連続でした。言葉や文化の違いもあったけど、作品を作る楽しさやチームとの一体感は変わらなかった。また、尊敬する山田孝之さんや仲間たちと一緒に濃い時間を過ごすことができて、すごく嬉しかったです」



- ショップ名
- BlackEyePatch
- フロア
- 西館 1F
- 電話番号
- 052-684-7277
- 公式ブランドサイト
- https://blackeyepatch.com/
- 公式SNS
- Instagram(@blackeyepatch)
Check here too>>
笠松将×Yohji Yamamoto|服と生き方。そこに宿る人生の美学を求めて
Check here too>>
笠松将×NUBIAN|タフな力強さと凛とした感情で紡ぐ、自分らしい物語

笠松将
1992年11月4日生まれ、愛知県出身。2013年より本格的に俳優活動をスタートし、映画やドラマを中心にキャリアを築く。映画『花と雨』(2020)で長編映画初主演を果たし、近作ではドラマ『君と世界が終わる日に(Hulu)』、大河ドラマ『青天を衝け』、配信作品『全裸監督2(Netflix)』、主演映画『リング・ワンダリング』、日米合作『TOKYO VICE(HBO max)』、『ガンニバル(Disney+)』、連続テレビ小説『らんまん』などに出演。強さと脆さを併せ持つ人物像を巧みに体現し、国内外で活躍する俳優として鮮烈な存在感を放っている。10月10日からスタートするドラマ「フェイクマミー」(TBS系)、ブッカー賞受賞作を原作とした海外ドラマ『奥のほそ道 –ある日本軍捕虜の記憶-』(U-NEXT)、10月17日から配信予定されるNetflixオリジナル韓国映画『Good News』にも出演。
Instagram(@show_kasamatsu_official)